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「ああ? 文句あんのかよ」 「色気抑えてこいよ俺の部屋行くんだぞ」 「だからだろうが」 「……今日は過去に戻るのが目的なんです。本当に戻れるかどうかの実験なんです」 「わかってるし」 「じゃあ、まあ、行くぞ」  くそ上手く会話できないぞガキか。ああガキだった。早く大人になりたい。  お菓子とか買うべきかと悩んだが、目的のために自室を使うだけであってそれ以上でも以下でもないんだからさっさと戻るべき、なんだが、自分でも知らないうちに手を繋いでいて、陽射しはきついし暑くて速くクーラーの効いた部屋に行きたい半面、もう少しこうしていたいとちょっとだけ回り道をしている自分もいる。  こういう時に限ってうららは黙っている。ダメだこういうのは性に合わない。 「なんだって今日はそんなに可愛いんだ」 「だ、だって、せっかく彼氏の家に行くわけだし」 「目的は一緒に過去に行くことだろうが。なんだよ本当似合ってんな。今日家に誰もいないって言っただろうが」 「聞いたけど」  聞いて覚えていて尚もその格好で来たということは、いやいや待て待て男の子が過ぎるぞ俺ったら落ちつけよ。私服を見るのは初めてじゃないだろ今までを思い出せって。確かにボーイッシュな服装が多かったがそれでも今までだって女子っぽさが消えていない服装だったじゃないか。スカートだって普段制服で見慣れてるだろ発情し過ぎだ勘繰りすぎだ恋人だからってそういうことをすぐ想像するのは獣と何も変わらないじゃないか。そうだそうだ理性を保とうぜ紳士的にスマートに今日を過ごそうじゃないか。 「脱がなくてもデキる且つ欲情しそうな服を選んだつもりだけど」 「台無しだ! 台無しだよお前! こっちのドキドキとか今ので綺麗さっぱりどっかいったわ! しおらしいままいろよもう台無しだ!」 「はあ!? 意味わかんねぇ知らねえよそんなこと! こっちはそれなりに覚悟決めてきてんだよ抱けよ! 可愛い彼女がこんなに可愛らしくしてきたんだろうが!」 「お前が雰囲気壊したんだよ! 言動も可愛らしいままでいろよ!」 「そろそろ慣れろよ夢見てんじゃねえよ! お前の彼女は! こんなだよ!」  何故このクソ暑い中で俺達は立ち止まってまでアホみたいな喧嘩して睨み合っているんだ。これはまずい。少し正気に戻ってしまって周りの目が痛い。喧嘩の内容が内容だからというのもある。
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