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 苦笑しながらも近づいていく。やっぱりなんだかんだうららには会えるんだ。これは惚気に入るのかね。  俺が他の女のことを考えていたって知ったら、あいつは嫉妬したりするのだろうか。気にならないわけではないが、何でも包み隠さず言うことは、美徳なんかじゃない。むしろ悪徳だ。上手な嘘は、結構必要。 「ちょっと懐かしくてな。今改装してちょっと綺麗になってんだよ」 「マジで!」 「なんでお前が驚くんだよ」 「いや、母校だし。途中で引っ越したけど」 「マジで!」 「あっはっはっはっは! 知っとけよ! あたしも知らなかったけど」  まさか学校まで一緒だったとは。尚更何で俺はこいつの存在を知らなかったんだ。 「まあ母校って言ってもほとんど通ってないし蛆虫死んでからすぐ転校したけど」  納得。それじゃ知るはずもない。 「で、何処行ってたん?」 「ちょっとな。実験」 「ふぅん」 「お前こそ何してたんだよ突然いなくなりやがって」 「最初は猫を追っかけてた」 「自由過ぎる」 「あんな綺麗な黒猫って初めて見たわ。だから誘われたんだよ。なんかスゲー逃げんだけど必死で追いかけた」 「お前から逃げてたんだよ」 「で、すぐ見失って、ちょうど公園があったからちょっと休憩しようと思ったわけ。そしたら面白い子供がいてよ」 「子供?」 「公園のベンチでまるでこれから死ぬことを知ってしまったみたいな呆然とした顔で、リストラされたサラリーマンみたいに脱力してよ。声一つ上げずに涙ぼたぼた垂らしてんの。すんげー可愛げなくて逆に気になったから声かけたんだよ。そしたらなんてことねぇ、ただの迷子でやんの。泣き方は大人びてるのに泣いてる理由がガキとかマジギャップ有りすぎだろ? しかも今まさに目の前に人がいるのに頼ろうって気は一切なくて、なんて言ったと思うよ? 『きっとこのままのたれ死ぬんです』だと! あっはっはっはっは! 思いだしただけで笑えてくるわ。しかも頬笑み浮かべて言いやがんの。ほんっと可愛げなくてよ、しかたねぇから無理矢理手を取って、とりあえず知ってる場所まで一緒に行ってやったよ。学校まで行けばわかるっていうから、この辺で知ってる小学校ここ一つしかなかったからちょっと不安だったけど、当たりだったみたいで一件落着だよ。で、あたしも懐かしくてここでのんびりしてたって、おいハルアキ! 何処行くんだよ! たぶんもうすぐ起きるぞ!」
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