0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺だって何処に行こうとしているのかなんてわかってない。何故走りだしているのかもわからない。ただ今猛烈に走りだしたい気分なんだ。正直走ってる俺が一番わけわかってない。俺はこんな風に急に走りだす様な人間じゃないはずでじゃあなんで走ってるか。いいだろう自分に嘘を吐くのはやめようというか走ってるからそんな余裕がない。
恥ずかしさを発散しているんだ。
話の半分くらい、いやなんなら最初の辺りで予想はしていたが、偶然だと思おうとしていた。だけどそんなはずがなく話が学校まで連れてきた件の辺りで居た堪れないというか、これこのあと起きたらうららが横にいるんだよなと思ったら、あれだけしないと豪語しておいてなんだが情熱というかリビドーというかとにかく抑えられる気がしないし、もしくは顔を見ることができなくてすぐに感じ悪く帰れと言ってしまいかねない。
その結果が、この脱兎の如くだ。
子供の頃の俺はいったい何を見てあれを女神だなんて表現したんだあれはモンスターだ。いきなり金属バットで殴りかかってきてむやみやたらに笑ってっばっかの。結果救われただけだぞああくそ! 格好か! タオルケット外套が巡礼者みたいに見えたのか! 俺のせいかよくそったれ!
「初恋の相手が今の彼女ってなんじゃそれええ!」
叫びながら、笑っちまってんだ、バカだほんと。
自分がどこにいるか確認する余裕もない。さっき叫んだのが最後の言葉になったみたいにもう声を出す気力もない。だけどなんだろうな、清々しい。俺は今、何処に寝転がってるんだろうか。車道なら、下手したら轢かれるな。困るけど、今はちょっとどうでもいい。
俺らしさが何もなくて、笑いが止まらない。声がだんだんと出てくる。うららのことを言えないくらい大きな声だ。
いや、あいつと一緒にいるうちに、移っちまったのかな。迷惑な。
ああ、なんかぼやけてきた。これはもしかして夢が覚めるってことか? さっきうららもそんなこと言ってたし。
うららと一緒にいなくても、帰れるってことか。まあ、それを知れただけでも、走った甲斐があったってことにしよう。
起きたら、そうだな、礼でも言ってやるか。
理由は教えないけど。
最初のコメントを投稿しよう!