3.

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 お前うららと関わるの否定派だっただろうが何掌返してんだよ。心変わりか誰に何を吹き込まれた。ああ俺か。なんてこった。そういえば学校外では普通に接するって折衷案が採用されたんだったか。  へらへらと俺が嫌そうにしているのを楽しんでいるその顔を殴ってやりたいがぐっと我慢して、「ねえねえ行こうはるるんねえねえねえ行こうよ!」子供のように飛び跳ね目を輝かせている凛李ちゃんに頬をひくつかせて、何か打開策はないかと考えて、妙案が浮かぶ。 「俺は良いけどうららがなんて言うか」  今うららは講習真っ只中。ここで一端話を俺預かりにして、うららに断るように頼めばまだ勝機がある。  大丈夫、餌で釣ればなんとでもなるはずだ。 「今日このあと会うから俺から――」  俺の話など聞くことなく凛李ちゃんはスマートなセルフォンをいじり耳に当てる。いやいや今講義中で電話になんか出れないよ。 「あ、らら?」 「え、嘘」  出ちゃうの? 「あのね、ららの夏期講習終わったら、わたしとららとよっちーとはるるんでデートしようよ。そう、ダブルデート。ね? いいでしょどうどう? うん! だよね! ありがとお大好き! じゃあ勉強頑張ってね!」  スマホをしまうと無邪気な笑顔とブイサインを俺に向けてきた。眩しい。 「はい、決定です!」 「だってよ」 「……あ、はい」 「日にちはまた改めて決めよう! ほら、信号渡ろう二回もスルーしちゃったね」  こうして渋々四人で、凛李ちゃんのいうところのダブルデートとやらに行くことになってしまった。物事の決定が速くてついていけないわほんと。  四人のライングループが即座に生まれ、日にちや時間も結局その日のうちに決まって、場所は難航中だがいずれどこかに辿り着くだろうから全部任せることにした。意外にもうららが乗り気で、凛李ちゃんとあそこに行きたい何処が良いあれもいいこれもいいとぽんぽん案が出るもんだから話がまとまらないでいる。  全部二人に任せて俺は俺でやるべきことをしていた。授業で何度かやったことあるくらいのレベルだから、納得いくものを作るためにかなりの時間が必要で、だが締め切りはもうすぐだから焦っていた。
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