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なんとか、満足は出来ないまでも、それなりの物はできたのが、締め切り当日だった。うららの夏期講習が終わった日、うららを家に送る時に、タイミングはいつにしようかと考えたが、考えててわたせなかったら間抜けだと気がついた。
「そんでよー、やっぱり四人で行くならテーマパークみたいな一日遊べる場所がいいとあたしは思うんだけど、どう思うよ」
「ほらよ」
だから話の流れを無視して持ってきた袋をわたした。
「なにこれ」
「夏期講習お疲れ様のプレゼント」
「菓子か! 菓子なのか!」
「いや、期待してるとこ悪いんだけど――」
「ああん? 菓子じゃない。なにこれ」
広げて裏返して腕を突っ込んでポーズをつけて、まあそういう楽しみ方をしてくれても構わないんだけど、用途はそうじゃない。
「バット入れ。抜身で持つなって、お巡りさんに言われたろ。それに、楽だろこれなら」
この前帰り道に警察に止められて、とりあえずファッションだと言い張ったが、何か対策を練った方が良いだろうと考えたのがこれだ。
「こんなん売ってんのか」
「売ってるかよこんな粗悪品。俺が作ったに決まってんだろ」
「マジで!」
「マジで。まあいらなかったら使わなくていいよ」
普通に専用バッグ買おうことも視野に入れていたが、せっかくなら本当にファッションに見えるようにした方が良いかと慣れない裁縫を頑張った。
「バーカ!」
「はあ!?」
「バーカバーカ! あっはっはっはっはっはっは!」
「なんだよ、ったく」
「大事にするに決まってんだろ」
「大したもんじゃねえよ」
「大事なもんだよ」
「……ああそうかい」
頑張った甲斐はあったってもんだ。
早速入れようとして、ふと止まり、空のまま肩にかけて、しばらく楽しんでいた。
「しまわんの?」
「今はダメ」
「なんで」
「汚れるから、拭いてから」
結局そのまま家に着いて、バッドを入れたところは見られずじまいだった。だけど相当気に行ってくれたことはわかって、嬉しいが、気恥ずかしい。そのあと『どうよ』という簡素なコメントと共に送られてきた写真を秒で保存した。
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