3.

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 これくらいじゃ、今のうららをどうすることもできないということだ。ならどうする。どうしたらいい。今うららは、この男、実の父親を自分の手で殺せたことに喜びを覚えていて、それよりも強く、人を殺してしまったことを悔いている。自分がしてしまったことに怯えている。それを、どうしたら緩和できる。こういうことはたぶんすぐに対処しないと、ずっと残ってしまう。  罪の意識。罪には罰か。罰、つまりこのまま警察に? いや待て、前に犯人は捕まってないとか言っていた気がする。つまりこれはここで捕まることはないってことか。いや今そんなことはどうでもいい。捕まるかどうかじゃない。考えるのは罰じゃない。罰じゃなく、なんだ、罪と罰、罪は罰せられる他に、懺悔、懺悔したら救われるんだったか、救い、そうか、救いか。何か救いがあればいいんだ。救い。何だそれ思いつかないぞ。ああくそ。なんだ、救い、いやそんな大げさなことを考えなければいいんだ。罪の意識ってのは、軽くすることができるもんだ。なすりつけたりすればいい。だけど、どうすれば。  音がして、二人して体を強張らせた。男はまだしぶとくもか細く呻き声を上げている。  その時、自分でもイカれすぎて震えちまうことを考えついてしまった。  とどめを俺が刺せば、罪は俺の物になるんじゃないかって。  完全にはならなくても、半分くらいは背負ってやれる。共犯者になれる。なれるが、俺に本当に出来るだろうか。犯罪も重罪、殺人だ。俺が今わざわざそんな罪を犯す意味はあるのか。ぶっちゃけない。逃げ出したいくらいだ。というか、逃げ出しちゃっていいんじゃないか? 正直に言わせてもらえば、血まみれで腕の向きとかわけわかんなくなってるのにまだ呻いて動こうとしているのが気味が悪くて吐きそうだ。足だって立てるのかわからないくらいガクガクだ。他人の為にこんなことをする価値があるのかよ。こんな状態の奴ほっときゃ死ぬんだ。心の傷も時間はかかるが癒えていくはずで、その間ずっと見放さなければいいじゃないか。今すぐうららを連れて逃げてしまえば、俺は、俺は――。  なんだよ、その怯えた顔は。  お前の武装が、剥がれ落ちてんじゃねぇか。
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