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笑顔はどうした。さっきまで気が違ったみたいに笑ってただろ。笑わないと生きてらんないんだろ。笑え、笑ってくれよ。まさかこの先、笑えないままになるのか? 笑っても、あの狂った感じしかできないまま、お前はいつか自殺とかしてしまうのか? 色んな表情を、もう見れないのかよ。
それは嫌だ。お前が笑えない世界なんて、俺はいらない。
お前がまた俺の横で楽しそうにはしゃいだり、感動したり、喧嘩したり、とにかく、俺の横でお前が生きてくれないのなんて、絶対に嫌だ。
ああ、妙に冷静になっちまった。体はまだ少し震えているが、これはうららから移ってきてるに違いない。
はあ。まったく、好きな女の為だからってこんなことすんのか? 自分に言うのも難だが終わってるぜそれ。人間なんて自分本位で生きるのが一番なのによ。うららと出会って半年だって経ってない。そんなに大事か? そこまでする程か? これで本当にうららが少しでも救われるか? やる意味あんのかよやめといた方がいいんじゃねぇの何度でも言うけどこのまま放置しとけば死ぬんだよ。ほっとけば良いだろもっと別の方法があんじゃねぇの考えろよご自慢の頭でよ。
とまあ頭の中では絶賛赤信号点灯中で九割九分九厘が否定派だ。
だってのに、なんでこんなに、覚悟出来ちゃってんのかね。
立ち上がろうとしたら、敏感にうららが俺の袖を掴んで、怯えた目で見上げてきた。
「大丈夫だ、何処にも行かない」
もう二度と、うららの近くじゃバットを握らないって決めてたのにな。
拾い上げたバットを剣道の竹刀のように一回二回三回と振ってみる。嫌になるくらい緊張がない。自嘲の笑みで頬が歪む。藤乃ばあちゃんの言葉が蘇ってきた。
〝踏み外すんじゃないよ。頭はいいんだ、使いな〟
ごめんばあちゃん。今やっと言ってた意味がわかったんだけど、理解するのが遅かったみたいだ。ありがたい忠告は、無視するしかないっぽいわ。
「ハルアキ……?」
躊躇ったら二度と出来なさそうだからすぐに頭をぐちゃぐちゃに潰す。気持ち悪い。人間みんなこんなもんなわけか。自分もうららも世一も凛李ちゃんも。中身は大体一緒。
ほんと、気持ち悪いな。
ああ、足が震える。良かった、力が抜けるのが終わってからで。
膝から崩れ落ちたが、痛みはない。マヒしてしまってるらしい。ドーパミンどばどばで。
「は、ハルアキ」
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