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大学からの帰り道、俺はアルバイトの面接を受けるため、美術館に入って行った。
ほとんどの学校は明日から夏休みに入るため、有名画家の展覧会に来る人達の案内や誘導、絵に触れないようにする監視係を急遽増やすことになったらしい。
俺の通う美大の掲示板にもアルバイト募集のチラシが貼ってあったので、学生課を通じて応募したら、書類選考に通ったと知らせがあり、今この会議室で面接を待つことになった。
しばらくすると、黒いスーツの中で身を泳がせるように痩せた女が机を挟んだ向かいに座り、俺の学校での生活や、友人や家族関係、プライベートな日常の細かい点など、それらがバイトに関係あるのかということまで聞いてきた。
だいたい俺の日常を聞かれたって、大学と一人暮らしのアパートを行き来するぐらいで、面白いことも何もない。
仕事一筋で、息子の俺に関心がない両親から離れて上京し、心の通い合う友人もまだいない俺は、自分の不器用さや生い立ちを責められているように感じ、答え方にもだんだん不愉快な気持ちが滲んでしまった。
それでも止まない質問にうんざりしかけた俺を見て、ガリガリ女がすまなそうに説明する。
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