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「すみませんね。プライベートにまで立ち入って。あなたに担当してもらう箇所は、通常の接客と違って、孤独に耐えられるかどうかが一番大切なんです。でもお答えして頂いたことから考えると、お任せして大丈夫だと思います」  聞いた途端に現金なもので、さきほどのうんざりした気持ちもどこへやら、俺は身を乗り出してそのガリガリ女に質問をした。 「本当に?俺を雇っていただけるんですか?」 「ええ、時間帯はこの美術館のオープンからクローズまでです。もしお時間があるようでしたら、今からクローズまでの2時間ほど働いてみますか?」  他に予定も無かった俺は、臨時収入が入ることを考えて内心小躍りした。 「ええ、お願いします。何をすればいいですか?」  その途端、ガリガリ女の目が怪しく光った。 「いえ、何も・・・。必要なのは鬱屈、孤独、恐怖、理不尽のエネルギーです。どうぞこちらへ」  不安になりながらついて行った部屋には、展示物の写真が所せましと貼ってあり、その一か所で立ち止まると、ガリガリ女が不気味な笑みを浮かべながら、一点の作品を指した。 「その絵の写真に触れてください」  今更、怖いという理由で引き返すこともできず、指の震えを抑えながら、誰でも一度はどこかで見たことがある絵に、俺は人差し指を添えた。 突然ぐんにゃりと視界がねじれた。 (ゆが)んだ景色に吐きそうになり、 慌てて胸を押さえて、前かがみになった。   「なんだこれは!?」     
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