2000

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 沙耶香は36歳、女性としての賞味期限ギリギリだ。今から10年前はケータイなんか存在しなかった。  繋がるとか繋がらないは肉体的な言葉だと思っていた。最近はネットに繋がらないとイジメるだとかそんなことばかりだ。  沙耶香はミステリー作家だが、ケータイの登場以来、電話線を切るってトリックが通用しなくなった。まぁ、どうでもいいか?  どうせ、今はワタシより佳苗の時代だ。  彼女のトリックは斬新だ。  佳苗の本業はセールスマン。沙耶香に憧れている。生まれつき霊感が強い。そのため毎日寝不足で父親の太一に叱られてる。 「明日は牛丸町で強盗がある」  そう予言したとおり銀行強盗が起きた。  牛丸町は平家の落人伝説がある貧しい町であったが、一方で資産家の佐伯が力を奮い、山林地主として影響力を保持していた。  新聞を読んでいると窓の外を黒いモノがバサッバサッと動いた。  カラスってのはいいな?自由で。  人間は進化しなくちゃいけない。  ポケモンみたいに。  7月30日夜、約10人の強盗団が竹槍や棍棒を持って佐伯邸に押し入り、就寝中の佐伯及び妻や家政婦・小学生3人に、棍棒で殴る、荒縄で縛り上げ頭から冷水を浴びせる等の暴行を加えて重傷を負わせた。更に家財道具を破壊した後、現金1万円とスマホを強奪して逃走した。  この事件の最中、長尾康文って奴が事故死したが、牛丸警察署は強盗殺害事件として捜査し、山狩りにより8人を検挙した。  8月2日  佳苗は牛丸駅前にあるスタバにいた。  太宰圭一も一緒だ。彼は牛丸署刑事課の主任だ。  圭一にカフェラテをご馳走してもらった。 「佳苗ちゃん、君スゴイね?超能力ってあるんだね?」 「それほどでもないよ」 「けど、佐伯は何で1万しか持っていなかったのかな?」 「さぁ?」 「仮にも資産家だぞ?手元に1万しか置いておかないなんて」 「強盗もよく1万でガマンしたね?」  佳苗は情報屋として圭一に飼われていた。  教材販売なんて売れなけりゃ商売にならない。 「10人で山分けしても1000円にしかならんぞ?中学生の小遣いじゃあるまいし?」  逮捕されたのは1番上が35、1番下が19だ。  全員名字が三須だ。9人兄弟、金に困ってやったらしい。長尾は佐伯の秘書をしていた。  長男の三須義明だけが見つかっていない。   「ミスだけにミスミス逃した?」 「佳苗ちゃん、ジョーク言ってる場合じゃないよ」  
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