お前と俺。

2/3
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
叶わないなんてことは、(はな)から分かっていたことじゃないか。 どうして今更、こんなに苦しくなるんだろう。 どうして今こんなにも、泣きたくなるんだろう。 「……おめでとう。伊折(いおり)香奈(かな)ちゃん、お似合いだと思ってたよ。」 学生時代に一度諦めた恋が、また痛みとなって現れる。 本当は、どこにも行ってほしくなかったのに。 俺だけのキミでいてほしかったのに。 それでも引き留めることができなかったのは、男同士だからってわけじゃない。 俺が臆病だったし、心のどこかで二人はお似合いだと思ってしまっていたから。 「ありがとな、野中(のなか)。今度はお前が幸せをつかむ番だぞ。」 「……おう。任せとけ。」 なんて強がりを言ってみても、やっぱり諦めるなんてできない。 だって、8年間の片思いなんだ。 高校二年生の頃にこの想いを自覚してから、諦めたくても諦めきれない日々を続けてきた。 高2の冬、伊折と香奈ちゃんが付き合いだしたっけ。 香奈ちゃんは学年のアイドル的存在で、男子みんなから妬まれては冷やかされてたな。 俺、本当はあの時いつも泣きそうだったんだよ。 お前は気づいてないだろうけど お前が付き合いだしたときも、思わず強がって『よかったじゃん、おめでとう』なんて無理して笑ったりもして。 ふたりが付き合う前に好きだと伝えていたら、何か変わっていたかな。 ……そんなこと、あるわけないって分かってるのに。 俺と伊折は男同士だし、なにがあっても付き合うことなんてなかっただろう。 あぁ、なんか……また泣きそうだ。 幸せになってほしいのに。 お前のためなら自分の幸せなんて捨てられるのに。 ……だけど、あれ? 胸に何かが突っかかったまま、楽にしてくれない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!