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叶わないなんてことは、端から分かっていたことじゃないか。
どうして今更、こんなに苦しくなるんだろう。
どうして今こんなにも、泣きたくなるんだろう。
「……おめでとう。伊折と香奈ちゃん、お似合いだと思ってたよ。」
学生時代に一度諦めた恋が、また痛みとなって現れる。
本当は、どこにも行ってほしくなかったのに。
俺だけのキミでいてほしかったのに。
それでも引き留めることができなかったのは、男同士だからってわけじゃない。
俺が臆病だったし、心のどこかで二人はお似合いだと思ってしまっていたから。
「ありがとな、野中。今度はお前が幸せをつかむ番だぞ。」
「……おう。任せとけ。」
なんて強がりを言ってみても、やっぱり諦めるなんてできない。
だって、8年間の片思いなんだ。
高校二年生の頃にこの想いを自覚してから、諦めたくても諦めきれない日々を続けてきた。
高2の冬、伊折と香奈ちゃんが付き合いだしたっけ。
香奈ちゃんは学年のアイドル的存在で、男子みんなから妬まれては冷やかされてたな。
俺、本当はあの時いつも泣きそうだったんだよ。
お前は気づいてないだろうけど
お前が付き合いだしたときも、思わず強がって『よかったじゃん、おめでとう』なんて無理して笑ったりもして。
ふたりが付き合う前に好きだと伝えていたら、何か変わっていたかな。
……そんなこと、あるわけないって分かってるのに。
俺と伊折は男同士だし、なにがあっても付き合うことなんてなかっただろう。
あぁ、なんか……また泣きそうだ。
幸せになってほしいのに。
お前のためなら自分の幸せなんて捨てられるのに。
……だけど、あれ?
胸に何かが突っかかったまま、楽にしてくれない。
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