涙なんて、

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「ふふ、いいのよ隠さなくて。諦めたくないんでしょう、野中くんのこと。」 「っ……そんなの、当たり前だろ……っ」 アイツが傷つくと分かっていて気づかないフリをした。 だって、俺じゃアイツを幸せにしてやれないから。 本当は誰にも渡したくないし、他の奴の目に晒したくない。 俺がこんなにも独占欲の強い男だってことも、そしてその独占欲が自分に向けられているってことも、野中は知らないんだろうな。 純粋なままでいい。 何も知らないままでいい。 ……俺が気づかないとでも思った? 野中がずっと俺を見ていたことも気づいてた。 でも……言い出せなかった。 「好きだ」なんて、言えるわけなかった。 最初から、間違った恋だったんだよ。 だから、俺と香奈が付き合いはじめたとき、お前が泣きそうな顔してて、すぐにでも抱きしめてやりたくなったけど……できなかった。 お前を失うのが、怖かったから。 俺の幸せのために必死で無理をする野中を見て、余計愛おしくなって。 離したくなかった。野中は、ずっと俺だけのものでいてほしかった。
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