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俺と野中は、毎日からまわってた。
恋するには、向いてない。
あの頃、俺だけに向けられていた笑顔が、「伊折」って呼ぶ声が、俺について歩くアイツが、何よりも大切だったんだって今更になって気づいた。
――もう、遅い。
もう少しはやく気づいていればなにか変わったんだろうか。
だとしたら、どこで道を踏み間違えたのか。
俺はなにもわからない。
お前は嘘をつくのが下手で、俺は不器用で。
両片想いだったのに、すれ違った。
『同性』なんて厚い壁が俺と野中を隔てても、愛さえあれば関係ないと思ってた。
でも、違ったんだよ、なにもかも。
野中の幸せは、俺と一緒にいることじゃない。
お前の幸せを願うばかり、自分の幸せを手放した。
香奈を利用して、自分の気持ちに蓋をしようとした。
女と付き合えばこの気持ちも忘れられるんじゃないかって……。
だけど、無理だった。
野中への気持ちは俺が想像するよりずっと大きくなりすぎていて、忘れるなんて到底無理な話だったんだ。
……悔しいけど、これでお別れ。
もう、野中のことを苦しめたりしないよ。傷つけは、するかもしれないけど。
だからどうか、これからも一生『友達』として……。
俺のそばで、ずっと笑っていてくれ。
――さようなら、好きな人。
お前の涙なんて、
(……もう見たくないから。)
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