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しばらく経ってからウィリアムが顔を上げたので俺は話し始めた。
「ウィリアム、まず今回の事だか…俺の名前は出さないで欲しい。俺は一応ヒーローを辞めているんだから。」
俺はただ強いという理由でヒーロー業をやらされていただけだ。今は一応、一般庶民。今回の事でまた持ち上げられてヒーローをやらされるのはごめんだ。
どうやら親友は俺の気持ちを察したようで首を縦に振った。
「カイトがそうして欲しいならそうするさ。ところでこれからはどうやって生きて行くつもりだ?
三年で一生暮らしていけるほどの金をお前は稼げてはいないだろう?」
「ああ、だから冒険者ギルドに登録して冒険者になろうと思ってる。それからもう一つ話があるんだ」
俺は気持ちを整理するために一呼吸置く。ウィリアムは態度を変えるような人間ではないことは分かっているが、それよりもっと高い次元の話ではどう出るかはわからない。ウィリアムは王族だから。
俺は意を決して口を開いた。
「実は俺の髪の毛の色は黒だ。そして、俺は冒険者として生活しながら今回のように腐った家族を倒していきたいと思ってる」
俺は髪の毛に掛けている変色魔法を解除する。根元から段々と金色の髪の毛は黒へと色が変わっていく。
「俺は、貴族達のヒーローじゃなくて貴族達の悪役になりたい。なるんなら、人々にとっての本当のヒーローの方がいい!」
俺はじっとウィリアムの返答を待つ。髪の毛のことはともかく、もう一つはこの国に関することだ。
俺はウィリアムの返答が気になって仕方がない。
するとウィリアムは急に笑い出した。
「お前は馬鹿か?俺はそんなことで親友であり、恩人でもあるお前を見捨てるとでも?
そんな心配そうな顔しやがって!」
ウィリアムの返答は俺が期待し、諦めていたものだった。ウィリアムは俺の背中を叩いた。
「じゃあ、カイト。俺の専属スパイ兼悪役なってくれるか?」
「は?」
俺はあまりに間抜けな声を出して首を傾けた。
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