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影送り、という遊びをご存知だろうか。
昔ながらの遊びで、小学生のとき国語の教科書でこれを知った者もいるのではないかと思う。よく晴れた日――特に雲の少ない日がいい。自分の影を十秒以上じっと見つめて、空を見上げるのである。すると、自分の影が空に白い影として映って見えるのだ。それだけか、と言われたらそれだけなのだが。原理がわからない子供であるほど、こういった現象は面白く感じるものであるらしい。本来地面にあるはずの影が、いつの間にか空に“映って”見える――だから、“影送り”。影を空に、送る――あるいは贈る。誰が考えたのかしれないが、面白い発想ではあると思う。
さて、こんなことを語る僕だが。僕にとって昔から、この影送りは安易に行ってはいけない遊びの一つだったりする。小学生になり、教科書で読む前から僕はこの遊びを知っていた。おじいちゃんに、“それは影送りと言うんだよ”と教えて貰っていたからだ。そして例のごとく教科書で件の物語を読んだあと、僕の学校でも影送りはほんのちょっぴり流行したのだが――僕は絶対に、参加しなかった。してはいけないとわかっていたからだ。
自分には不思議な力がある。それを知ったのは幼稚園の頃だった。
実は影送り、という遊びは自分の影だけでしかできないものではない。人の影を見つめても、やろうと思えばできる(少し工夫は必要だが)。何も知らない僕が初めて影送りをやったのは幼稚園の先生とだった。大人しく、男の子なのに絵を書いて一人でいる方が好きだった僕はいつも孤立気味だった。ゆうくんは友達と遊ばないの、とよく保育士さん達に言われたものである。僕は一人、夢の中に出てくる怪物の絵ばかりを描いて遊んでいた。それが多分保育士さん達には少々不気味でもあったのだろう。僕は絵を描くだけで充分楽しかったので、特に友達が欲しいとか寂しいなんて感情は沸かなかったのだが。
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