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『先生、友達ってどうして作らないといけないの?一人で遊んでるだけでも楽しいのに』
今から思うと――僕が幼い頃から見続けてる夢にも意味はあるのかもしれない。
僕は物心ついた時から、いつものように同じ夢ばかり見ていた。細かな内容は異なるが、基本的な流れは同じ。僕の目の前で、次々と人が残酷なやり方で殺されていくのである。例えば一列に並んだ人が、順番に大きな鬼の持ったハンマーで叩き潰されていくだとか。一人ずつ、ぐつぐつ煮えたぎる釜に落とされていくとか、そんな内容だ。
怖い、とか恐ろしい、なんて感情は沸かなかった。なんせ僕にとってその夢は“いつも僕の隣にある当たり前のもの”だったからだ。見物している僕に話しかけてくるのは、人間達に残酷な処罰を下している鬼達である。彼らはいつも愉快そうに僕に話しかけて教えてくれた。やれ、今ひき肉になった女は酷い奴なんだ、男を次々と騙して金を巻き上げていったんだぞ、とか。今突き落とされた男は子供ばかり狙って十五人も殺した大罪人なんだ、とか。そんな内容である。
現実の世界に、友達と呼べる人間は殆どいなかったが。敷いて言うなら、夢の世界の鬼達は僕の友達だったのかもしれない。現実の子供達とはいつも話が噛み合わないし、趣味があわない。鬼達の話を聞いている方がよほど有意義に違いなかった。僕は話をするのが得意ではないので殆ど聞き役だったけれど。できればずっと夢の世界にいたいと思うほど、徐々に僕の心は現実から離れていったのである。
さて、話を戻すが。
そんな僕が初めて影送りを行った相手が、幼稚園の保育士さんだった。僕のことをとても気の毒に思ったのだろう。彼女は“友達の大切さ”を丁寧に語ってくれた後で言ったのだ。
『そうね、じゃあ…今日は先生と遊ばない?』
そして、彼女に教わったのが影送りだった。影送り、という名前を知ったのは後になってからだったのだが。
『先生の影の方が大きくてわかりやすいかも。ちょっと先生の影を見つめて、言われた通りにしてみて。そう、十個数えて、そのままパっと空を見るのよ。そうするとね、影が空に映って見えるの』
僕は、彼女に指示されるまま影送りをした。そしさすがに驚いたのだ。先生はにこにこ笑って言う。
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