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『裕二、お前さん現実の世界に退屈してるんだろう?俺にはわかるぜ。お前はなんせ、人間でありながら“生まれながらの鬼”だからよお』
夢の中の“友人”は、そう言ってケタケタと哂った。
『だから俺らの世界に来ちまうし、惹かれしまうんだ。魂が知ってるんだよ。自分がいるべき場所はコッチなんだってな』
『そうかもしれない。…でも、此処にずっといる方法なんてあるのかい?』
『あるとも、あるとも。お前さんはもうとっくの昔に、ちゃーんとそれを知ってるはずなんだがなあ…』
僕の生きるべき世界は、“現実(ココ)”ではない。
それを聞いて、ずっと胸に抱き続けてきた虚無感の正体が見えたのだった。僕は、生まれてくる場所を間違えてしまったのだ。だから、夢の中で人がたくさん死んでも、保育士さんやお祖父ちゃんが亡くなってもさほど恐怖や悲しみを感じることができなかったのである。何故なら、僕は“死ぬ”ことをそんなに特別だとも、恐ろしいと思っていなかったからだ。人は遅かれ早かれいずれ死ぬ。それがただ早いか遅いかの違いだけ。何を怖がる必要があるのか、と幼い頃から当たり前のように思ってきたのだった。
それでも、とりあえず生きてみようかと思ったのは。もう少しこの世界で、何か楽しいことが見つかるかもしれないと思ったから――だったのだけれど。僕の生きるべき世界が間違っていると知った今、それに無理矢理しがみつく必要はもう無いのだろう。
決意をすればもう、早かった。
今日は日曜日。快晴。絶好の影送り日和だ。
――さあ、僕は三日後…どんな死に方をすることになるのかな?
少しわくわくしながら僕は、じっと自分の影を見つめて。
そして空を、見上げた。
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