マイホーム 181016

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マイホーム 181016

 家を建てる。私は楽しみを見出す。私の家。私の楽しみ。私はここまで生きてきた。そしてこれからも生きていく。私の人生。私の楽しみ。そのために私は家を建てることにした。私の家。私が住み、楽しみを見出し、生きるための家。  一戸建ての家だ。庭もある。郊外だが市内に土地を買った。60坪。千五百万。女性の一人暮らしには大きすぎるくらいの土地。2階建て。4LDK。玄関には木製のドア。15足入る下駄箱。その上にお花を活けるスペース。右側にLDK。キッチンと、カウンターと、ソファ。左に和室。ここはお父さんが訪ねてきた時に使う。真ん中に階段。上がると踊り場があって。ここに私はエレクトーンを置く。エレクトーンの音が家中に響き渡るだろう。そして2階には寝室と客間。玄関先にはちょっとした門構え。駐車場に私のシトロエン。これで、ざっと二千万。  お金はある。貯金と、早期退職金もある。キャッシュで払う。お釣りがくる。そうすればもう私の家だ。ここは私の家。誰にも文句を言わせない。私のお城。私は私のお城で私の楽しみを見出す。それが私。私のこれからの人生。これまで父と同居してきた。父の家も大きな家だ。父は食品会社の重役をしていた。だからお金はある。私が新しい家を建てる必要はなかったかもしれない。父だっていつまで生きるかわからないのだし。しかし私は家を建てることを決めた。建てたかったからだ。父も反対しなかった。いいんじゃない、とだけ言った。いい父だと思った。
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