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釣りバカ日記
朝4時
靖夫は原チャリに乗って鼻歌を歌いながら、海岸迄の道を走らせて居た。
靖夫の定年後の勇逸の趣味「釣り」に行く事が楽しくって、楽しくってしょうが無かった。
相当天気が荒れない限りは、それこそ毎日の様に釣り三昧だった。
60歳で定年を迎え、会社からは「嘱託として残らないか?」と言われたが、毎朝早起きをして、満員電車に揺られて、お得意さま周りをし、残業をする事にもう、嫌気がさして居た。
仕事人間だった靖夫は、結婚に恵まれず、独身を貫いていた。
蓄えは有るし、養う家族は居ないし、辞めた当初は楽しくって、何時迄も家でゴロゴロしてる毎日だったが、それも3ヶ月も持たなかった。
無趣味の仕事人間だった靖夫は、鏡を見て、一人で呟いた。
「頭髪も白く、薄くなって来たし、顔はたるんで来たし、俺ってこのまま、ドンドン老けて、その内、孤独死を、するんだろうか?」
「嗚呼、イヤだイヤだ、毎日ゴロゴロ、何かしなければ?」
「よし、明日からジョギングをしよう、家から海岸迄約2キロ、往復で4キロ、よし、そうしよう」
靖夫は翌日ジョギング用のシューズと、トレーニングスウェット上下を買い揃えた。
朝4時季節は7月に入ったばかりの初夏の良い季節だった。
いざ、走って見たものの、数分で息は上がるは、動悸はするは、脚は痛いは、海岸迄の2キロどころか、5百メートルも走れなかった。
「チェ!こんなに身体が鈍っていたなんて!」
靖夫はトボトボと歩いて海岸迄やって来た。
陽はとっくに上り、海岸に着いたのは5時を過ぎていた。
「ヤァー朝の海は気持ちがいいや~」
海岸線の歩道を歩いていると、前方の桟橋に人影が見えて来た。
靖夫は桟橋迄来て先端を見たら、釣り人が3人。
靖夫は釣り人に「おはようございます、何が釣れるですか?」と聞いた。
釣り人は、靖夫の方を見て「アッおはよう」と挨拶をしたが直ぐに竿を見て、遠投げをした。
釣り人は投げたと思ったら、直ぐに糸を巻いて竿を上下に動かして、先端が戻って来たら、また、投げて、巻き上げ、竿を今度は左右に振りながら巻き上げていた、釣り人は「ヨッシャ、ヒット」と掛け声をかけて釣り糸を素早く巻き上げたら、20センチ位の魚が釣れていた。
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