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重い体を引きずりなら私は電車で、係長は車で、それぞれ別々に出勤した。
駅で電車を待ちながら、昨日の夜を思い出してしまう。
自分があんなに愛されるとは思ってなかった。
それとも自分の物が他の人にとられるのが嫌なだけだろうか?
だって係長には別の女性がいるんだから……。
会社に着いてエレベーターを降りたところで係長が別の課の課長と話していた。
「おはようございます。」
と声をかけて通り過ぎようとした時に、
「沙也加ちゃん、おはよう。」
と後から声をかけられた。
聞き覚えのない声に不思議に思いながらも振り返ると、そこにいたのは知らない人。
「えっと……。」
記憶を辿って見るけど、やっぱりわからない。
「ひどいな。
昨日一緒に飲んだばかりなのに。」
昨日飲んだその他大勢の中の一人だったらしい。
「ああ……。
すみません。
覚えてません。」
「さっすが、毒舌姫だね。」
その人は楽しそうに笑った。
私の視界の隅にいる係長の瞳は嫉妬とも怒りともつかない色がギラギラと燃えたぎっている。
「あの……私下の名前って名乗りましたっけ?」
「金子ちゃんに聞いたよ。」
マジか……。
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