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スマホを冷蔵庫から出す時の方法を教えてくれた人には、近所のコーヒーショップで買っている量り売りの美味しいコーヒー豆を使ってコーヒーをいれた。
専用の水筒にミルで挽いた豆を入れてお湯を少し入れて蒸らしたら、今度は水筒の内側の線までお湯を注ぐ。
しばらく置いて、付属のプレス機みたいなものを下まで入れて蓋をすると、美味しいコーヒーがいつでも気軽に楽しめる。
しかも保温に優れていてかなりの高さから落としても壊れないという優れ物の水筒で、キャンプや登山をする人が使う物を私は普段から使っているのだ。
会社に行く前にコンビニでコーヒーに合いそうなビターチョコとスコーンを買って、コーヒーと一緒に渡した。
水筒をあげるつもりは無かったので、会社で紙コップにコーヒーを注いで渡そうと思っていたけど、すぐに外回りに出なきゃ行けないから水筒ごと渡してほしいと言われて仕方なく水筒を渡した。
気に入ってたんだけどな……。
まだ売ってるかな……。
だけど、水筒はその日の内に私の元に帰ってきた。
しかも美味しそうなケーキと一緒に。
「沙也加ちゃんコーヒー凄く美味かった。
喫茶店のコーヒーみたいだったよ。」
「それは良かったです。」
私としては水筒が戻って来た事が一番良かったんだけど。
「コーヒーって水筒に入れると味変わっちゃうのに、これはあんまり変わらないんだね。」
「そうなんですよ。
下手な自販機のドリップコーヒーより美味しいでしょ?」
「うん。
こっちの方が断然うまい。」
この人に興味は無いけど、自分がいれたコーヒーを褒められるのは嬉しい。
「これ、コーヒーのお礼。」
その人はそう言って白い箱を差し出した。
「ここのケーキめちゃくちゃ美味いんだよ。」
「えっ?
でもお礼にコーヒーいれたのに、そのお礼って……。」
「うん。
だから一つ貸しね。」
その人はニッコリ笑った。
ケーキは嬉しいけど、面倒な事になったな……。
かと言って突き返すわけにもいかないし……。
「じゃあこれはうちの係への差し入れってことでいただきますね。」
この箱の大きさと重さからすると、多分うちの係の人数分買って来てくれたみたいだ。
会社で渡すのに私だけが貰うのは気まずい事をわかっててそうしてくれただろうところは、営業ならではの気遣いかな?
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