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「駄目だよ、ちゃんと確認しなきゃ。」
ビールを一杯飲み終えて、由紀子ちゃんは熱く語る。
「結婚に関しては否定したんでしょ?」
「否定っていうか……ガセネタって言ってたから多分……。」
「係長も係長だよね。
沙也ちゃんがいる前でそんな話が出たらちゃんと説明するでしょ、普通。
私は最初沙也ちゃんと結婚するんだと思ったよ。」
「私はそんな……。」
「つーかその前に、係長の携帯にその女が出た時点で話すべきだよ。」
「うん。」
由紀子ちゃんの勢いに、私は頷くしかできない。
「もうはっきり聞いちゃいなよ。」
「だけど……。」
「沙也ちゃんと距離を置こうとはしてないんでしょ?」
「うん。
じゃあ大丈夫じゃない?
浮気してても戻ってくるよ。」
「浮気前提なの?」
「だって状況証拠が揃いすぎだよ。」
「そうなんだけど……。」
「もう営業マンに乗り換えちゃえば?」
「ヤダよ。」
「どうして?
見た目も悪くないし、優しそうじゃん。」
「そういう問題じゃないもん。」
「いいなぁ、モテモテで。」
「そんなんじゃないよ。」
確かに人生最大のモテ期かもしれない。
たけど、自分が好きではない相手からの好意は戸惑いしかない。
まして好きな人と付き合ってるんだから尚更……。
由紀子ちゃんと別れて自分のアパートに戻る途中、いつもの癖で係長の住む部屋に目をやる。
今日は実家に行ってる筈だからいないのはわかってる。
だけどつい見てしまうのは、会いたいから……。
マンションの一階のコンビニを見ると、中にあの女性の姿があった。
近くに係長のがいないか探すけど、係長は見つからなかった。
係長は今日は自分の部屋に戻ってるの?
こんな時間にいるんだから、きっと泊まって行くんだよね。
やっぱり気になる。
これはちゃんと聞かないといけない。
じゃないと晴人の時と同じになっちゃう。
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