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電車を降りて少し歩いた所にマリーナはある。
係長を待たせてはいけないと無意識に足早に歩いていると、マリーナの看板が見えてきた。
その看板の陰にこちらに背を向ける形で係長が立っている。
待っていてくれた?
そう思ったのも束の間、すぐに電話しているのだとわかった。
遠くに声が漏れ聞こえる。
「違うよ。
この間の電話は会社の後輩だって言っただろう?」
もう少しで係長のところに着くけど、先にお店に入っていた方が良さそうかな……。
そう思って係長のすぐ後ろまで来た時、係長の苛立った声に私の足は止まってしまった。
「だから上野はそんなんじゃないよ。
女なんていないってずっと言ってるだろう。」
頭が真っ白になるってこういう事を言うんだろう。
今耳から入ってきた言葉が何度も頭の中を巡っているのに、全く意味が理解できない。
咄嗟に係長から逃げようと今来た方向へくるりと方向転換した。
背後で
「上野?」
という声が聞こえたけど、私は全力で走り出した
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