駄目な私を助けてください!!

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頑張って頑張って走ったのに、私はあっけなく係長に捕まってしまった。 「上野。」 息を切らしながら必死に話しかける係長。 「悔しい。 なんでいつも捕まっちゃうの? 全力で走ったのに。」 きっと今の私は酷い顔をしてる。 そんな顔を係長に見られたくなくてうつむいて体を係長のいない方に捩る。 「元陸上部なめんなよ。」 陸上部だったんだ。 こんな時だって格好いいなんて本当にズルい人だ。 「さっきの電話は違うんだ。」 「係長にとって私って何ですか? 女はいないって? あの言い方は完全に浮気相手って聞こえました。 私は浮気だったんですか?」 「違うって、俺の話聞いて。」 「嘘つきの話は信じられません。 もう連絡してこないでください。」 私はありったけの力を振り絞って係長の腕を振り払おうとするけど、離してもらえずに何度も腕を振り回した。 「希美は違うんだって。」 「希美さんて言うんですね。 それって浮気男の常套句じゃないですか。 最低です。 見損ないました。」 「違うって。 ちゃんと聞いて!!」 「離して!!!」 私の大声に戸惑った様に係長が掴んでいた腕を離した。 無言で立ち去ろうとする私に、 「姉なんだ。」 そう呟くような声で言った。 「この期に及んで嘘つくなんて信じられない。」 以前に見せてもらった家族写真のお姉さんとは似ても似つかない。 私は完全に頭に血がのぼって状態でその場を立ち去った。
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