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「サヤちゃん明日合コン行かない?
1人足りないんだよねー。」
仕事が終わって帰り支度をする私に困った様子で話しかける金子さん。
今日こそははっきり係長と付き合ってることを言わなきゃ!!
そう決意して口を開く。
「悪いが上野には恋人がいるんだ。」
そう言ったのは私じゃなくて後ろからあらわれた係長。
「だから今後一切上野を合コンとか、それに近い飲み会に誘わないでほしい。」
そう言って金子さんを見た後に村田さんを睨みつける。
一瞬でその場が凍りついた気がした。
流石に威嚇しすぎたと思ったのか、係長は少しだけ表情を和らげて続ける。
「もちろんそれ以外なら誘ってくれて構わない。
さあ帰るぞ、沙也加。」
私は閉じるタイミングを失った口を「はい。」と返事をする事でなんとか閉じることができた。
バッグを肩にかける暇もなく先を歩く係長に駆け寄って、さり気なく係長の腕に手を回す。
流石に恥ずかしくて後ろを振り向けずに「お先に失礼します」の挨拶もしないでその場を去ろうとすると、後ろから「ウソーーー。」という悲鳴のような金子さんの声が聞こえた。
会社の建物から外に出る途中で例の営業さんとすれ違う。
私に声をかけようとしていたようだけど、私の係長に巻き付けた腕を見て立ち止まったまま私達を見送った。
なんだかみんなの反応が面白くて笑いがこみ上げてくる。
それを見ていた係長がやっぱり同じように感じたのか、私につられたのか、「ハハハ」と声に出して笑っていた。
それを見た周りの人がさらに驚いたようにヒソヒソと話をしていた。
「失敗したかな。」
楽しそうに係長がつぶやく。
「何がですか?」
「腕を組んだだけでこれだぞ。
付き合っていることを言わずに突然結婚したらみんなどんな反応をするかと思って。」
「確かに。」
会社の玄関で由紀子ちゃんが来るのを待ちながら笑いが止まらなくなる。
「会社でイチャつくのは今日だけにしますね。」
今日腕を組んだのは私達が付き合ってることを示すためだから。
「そうだな。
だけど……二人きりの時はいいだろ?」
係長は魅惑的に微笑む。
「駄目です。
そんな表情、間違って誰かに見られたらと思うと……ダメ。」
「イケない場所だと思うと興奮するのに。」
「変態。」
係長はまた「ハハハ」と笑った。
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