花さんの臓器。

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朝、出勤時に女性に捕まっている、うちのスタッフを見た。 中島さんだった。 中島一華ーなかじま ひとかー 29歳、脳外科看護師。 彼女に対する僕の評価は高い。 有能、冷静、最近は、オンとオフの切り替えが激しいかな? 職員通用口入口で、年上の女性に捕まる姿は意外で、思わず声をかけた。 「中島さん! おはようございます。時間ですよ?」 「ああ、はい。おはようございます。」 と言い、相手の手を払い、走ってくる。 女性も追いかけてまでは来なかった。 「すいません、助かりました。」 バツが悪そうに答える。 「いえ。患者さんの家族とかですか?こんな朝早くから・・。事務に相談した方がいいのでは?」 「ああ・・。あれは私の実の母です。お恥ずかしいですけど。お金を借りに来たんです。」 そう吐き捨てて、彼女は更衣室に向かって行く。 更衣室まで入る事も出来ないし、そこまでプライベートに立ちいる仲でもない。 花さんという共通の友人?知り合いがいるだけだ。 いうなれば、妻の友達が同じ職場にいる。 (しつこく聞くのもな。) 声は、かけて正解だったか?とは思ったが、それでいいとしようと考えた。 助かりましたと、言われたのだし・・。 脳外科は手術自体も細かい。 外科と違い、団体での相談、予備知識、とにかく、会議は多かった。 細かい神経を使う手術には、何人もの手といざという時に動ける知識、情報の共有は大事で、外科よりは細かに行われていた。 外科は、 「よし!切るぞ!!はい終わった!」 なんていう・・新谷先輩の様なのもいる。 ここでは、まずない。 外科が雑だと言うわけではない。 病気の種類が違うと言いたい。 誤解を受ける発言は、新谷先輩に申し訳がない。 今や、医局部長だ。 大出世だ。 あの人を止められるのは・・今や、院長と愛実ちゃん、愛花ちゃんくらいだろう。 異動してからは、滅多に会わない。 病棟も、医局のある建物も違うし、当然、時間も合わない。 寂しいような?安心するような?気分だった。
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