花さんの臓器。

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少し遅い昼ごはんを職員食堂で食べていた。 人もまばらで空いていた。 人気の物はなくなっていて、唐揚げ定食を仕方なく食べていた。 「ここいいですか?」 「どうぞ?」 顔も見ずに返事をする。 (他にも席は空いているのにな?) と、ふと、前の席に座る人を見る。 「ん、なか、じまさ、、。ごほっ・・。」 「なんですか?ちゃんと空いてるか聞きましたよ? どなたかお見えですか?」 「いいえ、そうではなくて。ちょっと驚いて。」 「朝、変な所を見られてしまいましたし、一応、弁明をするべきかと・・。」 そう言って食事を始める。 「あ、鮭・・あったんだぁ・・。気付かなかった。」 「食べたかったんですか?」 「一人だと魚はあまり食べないので。」 「私は唐揚げが良かったです。品切れでした。」 僕の膳をじーっと見る。 (そうだった。食べ物には執着する人だった。) 「良ければひとつどうぞ?」 「ホントですか?じゃあ、これ、まだ食べてないので、半分どうぞ。」 そう言って、新しい置いてある箸を取り、魚を半分にして載っけてくれる。 「で、遠慮なく・・。」 ぷすぷすと、ふたつ唐揚げが移動する。 「あ!!2個。」 「魚の半身は2個に相当します!」 言い切られた。 「まぁ・・いいですけど・・。」 僕も食事を続ける。 「朝も言いましたけど母です。小学生の時に離婚しまして、私達は、あ、弟と妹がいますが。 父に引き取られて、母はすぐ新しい家庭を・・。ご主人が病気とか、お金を貸してほしいとか、弟たちに会わせて欲しいとか、家には行けないので・・父がいますから。それで私の所に。」 「なるほど。事務に相談はできませんね。」 僕は興味なく答える。 「ふふっ。そういう所、楽でいいですね。同情もない、侮蔑もない。私は楽です。」 「そうですか?冷たいと言われますが?」 「取り方はそれぞれです。同情も嫌ですし、母のせいで私が侮蔑されるのも癪です。なので、私には楽です。安曇先生は、そういう事で看護師への態度を変えません。仕事がしやすい。」 「ん。それは良かった。花さんが好きだった人に嫌われるのは少し辛い。」 「むしろ誉めました。」 「どうも・・・。」 無言で食事を続けた。
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