花さんの臓器。

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母親に説明する。 「最近、食欲落ちてませんでしたか?」 「そういえば…」 「レントゲン撮りに行ってもらいます。恐らく、肺炎と思われます。その場合、何日か入院になりますが、よろしいですか?」 「はい。よろしくお願いします。あの、大丈夫でしょうか?」 「はい。肺炎だとしても、お母さんが早く連れて来て下さったから初期だと思いますよ。ちゃんと処置すれば回復も早いです。点滴もしますが、薬や、食べ物、他にアレルギーありますか?カルテには特になしとなってますが。」 「はい、大丈夫です。」 「では、看護師がご案内します。」 ちょうどいいタイミングで車椅子が入って来た。 それに乗り、元木さやさんは診察室を後にした。 懐かしい、くすぐったい再会だった。 彼女は覚えてもいないだろうけど。 交代時間になり、帰宅する前に小児科を覗きに行った。 元木さやさんは、よく眠っていた。 大きくなった…顔付きはお姉さんになってるけど、そのままだ。 ( 花さんが見たら、どれだけ喜ぶだろう。) 小さな子がこれだけ成長するだけの月日が経っている。 病室を後にする。 分かっている、それでも家に帰ったら…僕はまた、花さんの影を追いかけるのだ。 病院を出ると出口の横で大きな声を聞く。 「いい加減にして! 連絡先なんて教えられるわけないでしょう?あの子にもお金を要求する気?」 何の揉め事かとは思うが、今の自分には興味がない。 スルーしようとして、見てしまった。 中島さんと目が合った。 「あ……。」 バツが悪く、立ち去ろうとする。 「安曇先生、今から飲み会行かれるんですよね? 私も参加にしてたんです。ご一緒します。」 そう言うと中島さんは駆け足で隣に来て歩き出した。 僕は何も言わず歩いた。 しばらく歩くと、 「先生、申し訳ないのですが、奢りますから本当に飲みませんか?」 と、中島さんが提案して来た。 母親が付いてきているのが僕にも分かった。 「ごはん、奢りなら。お酒は飲まないので、お付き合いでいいなら。」 と答える。 「助かります。何処がいいですか?」 「そこは?焼き鳥ですけど、美味しいですよ?」 「オッケーです。行きましょう。」 二人で焼き鳥屋に入った。 中島さんはクールではなかった。 ガンガンに飲んだ。 見事な飲みっぷりだった。
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