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「先生は心臓をあげたから死んだの?」
「違うよ?先生の心臓は、確かにここにあるけどね。」
僕は胸に手を当てて答える。
「先生はどうして死んだの?」
「先生は、頭の中にね、大きなんー・・たんこぶ?みたいな物が出来てね。
それは、取れなくて先生はその所為で弱くなって亡くなったんだ。」
「病気?」
「うん。」
「じゃあ、何で心臓?」
僕の胸を指差して聞いた。
「そうだね・・。何でだろうね?」
彼女の手を握りしめて、僕は少し泣く。
大人が泣く姿を見て、驚いたように聞く。
「大丈夫?ごめんなさい。」
「いや・・。君は悪くないよ?僕はね、安曇公太と言います。森崎先生とはお付き合いして結婚しました。 先生は今は結婚して安曇 花と言います。ここまでは分かる?」
元木さやはコクンと頷く。
「花さんはあと、これ位しか生きられません、と言われてしまいました。それでも、いろいろ、多分考えて僕と結婚しました。 僕は、心臓の病気になりました。 花さんは・・森崎先生は、僕に心臓をもらってねと言い残し死にました。僕は・・もらいました。 簡単に話せば、それが真実です。」
僕は、我慢できずに涙を溢してしまう。
「先生がそうしてって言ったんだね?」
「うん。 絶対、もらってって。」
「良かった。先生は、自分のお願いを聞いてもらえたんだね?」
「そうかな?」
「心臓・・・・聞いていい?」
「どうぞ?」
さやさんは椅子から立ち、胸に耳を当てる。
遠慮気味に恥ずかしそうに。
「先生・・さや、強くなったよ?元気だよ・・。」
小さな女の子の中に花さんを見る。
「ごめん。君の先生を助けられなかった。」
僕はそう言うことで精一杯だった。
「わざわざ、それで来たの?」
落ち着いて椅子に座り聞いた。
「うん。気になってたの。心臓取られたって…聞いたから。この前会った時、見たことあると思って、考えてたの。」
「先生好きだった?」
「うん・・。優しかった。怖い時もあるけど・・。」
「そっかぁ。ありがとね。遠いのに来てくれて。よし!送るから帰ろうか。」
「一人で平気。」
「駄目だよ。遅くなる。女の子一人は危ない。家の近くまでお母さんには内緒なんでしょ?」
僕がそう言うと笑って頷いた。
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