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帰りに、お墓に少し立ち寄る。
「また来ます。月命日にでも・・。それまでは、花さんを心に入れる努力をします。
無理にではなく、自然に。百合さんもそうしている。
忘れるなんて、出来るはずもないですしね?では、次も美味しい物お持ちしますね?」
花さんのお墓を後にする。
冬なのに、後ろから暖かい風が吹いた気がした。
家に帰ると、やっぱり花さんが笑って迎えてくれる気がした。
1周忌も、その後も、僕たちは花さんの思い出話はしたけど、そこにいる気がする・・とは言わなかった。
百合さんはもしかしたら、僕の為に言ってくれたのかもしれないし、本当にそうなのかもしれない。
それは分からないけど、僕よりはあの家に、小さな頃からの花さんとの思い出も、ご両親との日々もちゃんとありながら、百合さんはきちんと、自分の中にしまっているのだ。
誰もいない時に、不意に現れるのものなのかもしれない。
花さんを今も見る・・・・。
悪い事ではない。
忘れる事が出来るはずもない。
そう思うと少し気が楽になった。
「夢でもいい、幽霊でもいい・・もう一度でもいい、あなたに会いたい。
花さん、会いに来てくれたら何だってするのに・・。」
不思議な事に、ぽっかり空いた穴は、時間がたてば経つほど大きくなる事もあるのだと分かった。
時薬・・なんて、ない事もあると気付く。
それでも、時間になれば起きて仕事に行く。
僕を助けてくれたように、僕も助けなくては。
使命感のように、そう思っていたから。
そして、3回忌が無事に済んだと、百合さんから連絡を戴いた。
ホッとした。
夫不在で申し訳ないとも思った。
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