ニナハレア

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 透明度の高い特殊強化アクリルが空を覆う。  そこから見えるのは赤々とした星と、その衛星の黄色の星。  娘が七つになったとき、七夕の空にはその二つが綺麗に浮かんでいた。 「ねえ、お父さん。あのお星さまは親子なの?」 「親子か。はは、そう見えるかい?」 「うん! お母さんが怒るとお顔が真っ赤になるもん」 「なるほどなぁ。母さんは怒ると真っ赤な顔して、追いかけてくるものなぁ」  娘から見れば、赤々とした星と、その周りを回る黄色の衛星が、追い駆けっこをしているように見えるらしい。  私は娘の頭を撫でた。 「頭が良いなぁ。いや、天才だ!」 「あたし、すごいの?」 「ああ、すごいぞ」  そう言い置いて、私は娘を肩車すると、一緒に二つの星をしっかりと見上げた。 「なんたって、あの二つの星は本当に親子なんだ。私たちが生まれるずっと昔、赤の星から黄色の星は生まれて衛星になったんだ」 「赤のお星さまが黄色のお星さまを産んだの?」 「そうだとも。あれは、あの星は、母なる星って呼ばれていたからね」 「母なる星?」 「うんと昔だけどね。お父さんが生まれるよりも、ずっと昔。赤の星が、青く綺麗に輝いていたころ、そう呼ばれていたんだ」 「あたし、知ってるよ! 青かったとき!」  娘は、自慢するように赤々とした星を指差して、笑う。 「赤のお星さまはーー地球って呼ばれてたんだよね!」  
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