正反対の二人

16/16
前へ
/16ページ
次へ
そうして数か月後、桜が綺麗に咲く季節。 僕と彰吾は東京のとある小さな図書館で、隣同士に座って本を読んでいる。  奴はやっぱり茶色い髪でピアスを付けて、静かに村上春樹を読んでいた。  そして僕は、分厚い眼鏡を卒業してコンタクトデビューを果たし、しかしながらやぼったい黒髪のまま、大学のレポートに使う経済本を読んでいた。 「透」  彰吾がこっそりと僕に耳打ちをする。 「この後あのカフェに行こう、新作のフラペチーノが出たんだよ。」 「いいよ、でも僕は半分しか飲まないからね。」 お約束の言葉を二人呟いて、顔を見合わせ笑う。 ここまでは、あの静かで小さな町の図書館にいた時とは何も変わらない。 でも、新作のフラペチーノはテイクアウトして、狭い部屋で二人、彰吾の読んだ本の感想を聞きながら、その甘さを半分に分かち合うのだ。 END
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加