正反対の二人

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 そんなわけで、暫くの間僕は静かに勉強ができるところを探す流浪の旅人と化していた、地元の図書館は大学生とちぴっこで溢れていたし、喫茶店は意識高い系がパソコンを開いてカタカタしているし、ファミレスでは若いパリピがドリンクバーではしゃいでいる。個室と言えばカラオケだけど、そもそも僕は入った事も無いので良く分からなかった。そんな風に土曜の午前中は常に町をウロウロしていたけれど、一向に良い勉強場所は見つからない、ならばいっそのこと学校にでも行ってやるかなんてアホな事を考えて、休日の一時間に一本しか来ないローカル電車に飛び乗った。  平日は学生とサラリーマンでギュウギュウ詰めな車両も、休日の午前という微妙な時間帯にはガラガラに空いていた。いるのは明るい色のリュックサックと背負ったおばちゃん達と、眠そうにスマホをいじる若者くらい。  シートに座り持っていた文庫本を開くと、やっと人心地着いた気がする。静かな車内、響くのはガタゴトという電車の音。  空いている電車もいいけれど、やっぱり勉強はちゃんとしたところでしたい。そんな思いを強くして、僕は平日の通学にだけ使っている駅に降り立った。  そもそも、僕の通う進学校はこの駅から更にバスに乗って20分、そんな訳だから駅の近くに何があるかなんてそもそも気にしたことが無かった。  いつも通ってる場所なのに土地勘が無いなんておかしな話だけど、興味が無いとそんな物なのかもしれない、例えば僕の住んでる町だって隣町の事は良く分からなかったりするし。 駅の傍にあるのはコンビニと、公園くらい、あと明治の偉人の銅像があることに今気が付いた。バス停が反対側だから、そもそも視界に入らなかったと見える。     
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