正反対の二人

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 知らない街をウロウロして迷子になるのは嫌だったので、スマホで周辺に何があるのか地図をググって居たら、図書館の文字が見えた、ここから歩いて10分ほどの所にあるらしい、折角なのでその図書館に入ってみる事にした。町自体も本当に静かな所だから、もしかしたら図書館も良い所かもしれない、そう辺りを付けた僕の勘はさえて居た。  大きな公園の隣にある図書館は、僕の町の図書館よりも小さくはあったけれど、蔵書もそこそこあったし何より、二階の奥に作られた自習室に机といすが沢山並べてあったのだ。  この自習室は階段を挟んで反対側にあり、完全に図書館とは独立していた。[自習室]と書かれた扉を横に引くと、中には数人いるくらいで、皆自分のしたいことに熱中している。静かでとても居心地が良い。 なんだか嬉しくなって、僕は窓際に近い椅子に座りいそいそと勉強道具を取り出した。一学期分の復習は済ませてあるけれど、来週当てられそうな所も確認したいし、大学へ向けての勉強もしたい。少しの時間も惜しくて僕は集中して参考書にのめり込んだ。  その日以来、僕は毎週この図書館に通っている、いつ行っても騒ぐような人はいないし、勉強に疲れたら本を探して歩いたり、自習室に借りた本を持ち込んでのんびりと読書をしてみたり、そんな幸せな時間を過ごしていたのだけれど、悲しいかな、その幸福はあっという間に姿を消してしまったのだ。そう『奴』という時間泥棒の手によって。
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