正反対の二人

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 僕はアホな癖に頭の良いことを言いたがる奴よりは、アホな事を自覚して本を読む奴の方が人として認めても良いという持論がある。  僕が走り書きから目線を上げると、キラキラと期待して瞳で奴はこちらを見つめて来た。  やめろ、そのまなざし、無視したら悪い事した気分になるだろ。僕は少しの間悩んだ後、レシートの空白に作者名を書いて奴に渡してやった。 『星新一』  ショートショートの神様、これなら一話一話も短いし読み切れるだろう。この手のタイプに長編を進めるのは愚かだ、下手に飽きて構ってこられるのも面倒なので、一時間くらいの暇つぶしを用意してやった。  もちろん、僕は一時間後に帰るので。その間大人しくしてくれればいいなという気分だったのもある。  奴は紙を受け取って、パァッと顔を輝かせウキウキと自習室を去って行った、いいぞ!そのまま戻るなよと念じて、再び参考書に意識を戻したが。  10分後再び奴は姿を現した、手には星新一の文庫本を手に持って。     
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