正反対の二人

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そもそも、この本は小学生の教科書にも載っているから難しいはずは無いんだけど、まぁ基礎を知っておくのは大切だ何事にもね。  漢字検定二級持ちの僕には、なんて事の無い単純な作業だったけれど、漸く一冊を読み終えた奴は本をパタリと閉じた後、腕を大きく広げ僕にギュっと抱き着いて来た。  パリピ特有の感謝のハグ止めろ!少し離れた席のお姉さまがガン見してるだろうが!  しかし、怒鳴るわけには行かないので、奴が満足するまでハグされてやった。  奴の茶色い髪からは甘い整髪料の香りがした。今どきの不良は御洒落なんだなぁ。瓶底眼鏡に寝癖付きの黒髪を持った、見た目からしてガリ勉の僕は、そう思いながら現実逃避した。  昼の時間が近づいて来たので、僕は勉強道具をカバンに仕舞い立ち上がる。すると隣で意味を確かめながら本を読み直していた奴も、慌てて本を閉じ僕の後について自習室を飛び出した。  外に出る階段を降りていくと、奴は「本返してくるから、ちょっとそこで待てよ!」と泣きそうな声で僕の腕を引き、またしても捨てられそうなコーギーの様な顔をして僕の憐れみを誘った。     
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