正反対の二人

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 僕は断じて犬派ではない、むしろハシビロコウ派であるのだが、不良のそんな姿には少しだけ弱かった。これが世間一般でいう所の、ギャップ萌えと言うやつか等よ思ったのは内緒である。  絶対そこ動くなよ、絶対だからな、とコントのフリの様な事を言いつつ奴は、棚に本を戻す為速足で向かって行った。  正直お腹もすいているし、喉も乾いたし、電車の時間もあるから奴の事など無視をしても良かったのだけれど、本を教えたり、漢字を教えた対価くらいは貰ってもいい気がしていた。コーヒーとか奢って貰おうかな。    不良に「ちょっとお前、そこでジャンプして見ろよ」 とか結構と言ってみたいセリフ。 誰も通ることの無い階段に腰かけて、次の電車の時刻を調べていると、本を返し終えた奴が背後からにゅっと現れて僕のスマホを覗いて来た。 「お前、電車なの?」 そうだけど、とぶっきら棒に言うと。奴はあと40分あるじゃんやったー!とか意味の分からない言葉を告げた。 こいつ更に、僕の時間を奪う気でいるようだ。 しかも、「俺もそれ乗るし!」といって「一緒に飯食おうぜ!おごっちゃる。」楽しそうに二パッと笑い僕の手を引く。 はぁ?僕良いとは一言も言ってませんが?不良ってこんなに強引な訳? 頭がぐるぐるしながらも、ここで逆らって難癖付けられてはたまらない、奢りならまぁいいかと、僕は大人しく奴の手に引かれてやった。
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