正反対の二人

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正反対の二人

『帰りにスタバで、フラペチーノの新作飲もうぜ。』  ノートの切れ端に書かれた汚い文字をじっと見つめて、持っていた赤ペンで二重丸を付けて隣に渡してやると、へたくそに切られた紙切れを渡してきた隣の奴は、嬉しそうにへらりと笑った。その表情が無性に癇に障ったので、紙切れを丸めて指でピンと弾き返してやれば、見事に待ち構えていた奴の手のひらに収まってゆく。 「ナイッシュー」 小声でつぶやかれたそれを無視して、僕は参考書のページを捲った、たとえテスト期間でなくても勉強するのが、進学校に通っている僕の使命であるので。  僕の視線が参考書とノートに吸い込まれていくのを確認すると、一つ席を開けて座っていたそいつは少し詰まらなそうな顔をして持っていた本を読み始めた。  今日読んでいるのは江戸川乱歩、先週僕が進めてやった本だった。
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