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礼拝堂では多くの人が手を合わせて祈りながら、神父の言葉を聞いている。だが二人、先程の神父とは違う若い神父が側に立っているのを見た。
一人はダークブラウンを撫でつけた男。そしてもう一人はグレーの髪を下ろした男だった。
どちらも神父というには雰囲気が鋭い。視線も同じだった。
ランバートは近いベンチに腰を下ろし、壮年神父の話を聞きながら祈りを捧げる。それを確認した三人の神父は、それぞれの表情を浮かべていた。
やがて礼拝が終わり、町の人々が帰っていく。ランバートが立ち上がると、壮年の神父が気遣わしい様子で近づいてきた。
「ご気分は如何ですか?」
「おかげさまで、すっかり落ち着きました。神父様にはなんとお礼を言えばいいか」
「困っている人に手を差し伸べる事もまた、神に仕える者の勤めです。お気になさらず」
人のいい笑みを浮かべる神父に対し、背後の若い神父二人は既に値踏みの目だ。ギラギラと目を光らせ、時に唇を舐めている。
どうやら、問題なくひっかかってくれるようだ。
「もう一人の子は、大丈夫ですか?」
「それが……」
「どこか、怪我でも」
「いえ、怪我はないのですが。……よほど、辛い思いをしたのでしょう。言葉が出てこないようで、何を問いかけても口は動くのに声が出なくて」
「なんて、惨い……」
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