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どこまでが本当かわからない情報だが、案外あってもおかしくはない。教会はラン・カレイユから奴隷を仕入れているのだから。
「ただ、普通の神父などは知らない道なのです。そこで、こっそりお教え致しますのでこれから部屋へ」
「そういうことでしたら、私どもの部屋へお越し下さい。それを聞いたらあの子、とても喜びます」
「あの子?」
ルジェールは警戒心が強いらしい。僅かに眉を動かして抵抗しそうな様子をみせる。だがここで諦めるには惜しい。こいつを捕まえて、喋らせるのが目的だ。
「成人しているのかも分からないような、幼い子なのです。あまりのショックに声を失ってしまって。でも国に帰れるかもしれないと聞けば、きっと気力を取りもどします」
声が出ない。つまり、何があっても伝える事ができない。しかも幼い子だと聞けば、ハードルは下がる。
実際ルジェールは僅かに口の端を上げた。
「そういうことでしたら、お手伝いさせていただきます」
善人の顔で胸に手を当てたルジェールを連れ、ランバートは二階の部屋へと上がっていった。
ドアをノックして、押し開ける。窓際のランプに明かりが灯っているばかりで、ラウルの姿は見られない。
ルジェールがドアを閉める音がする。そして後ろから無遠慮にランバートの体を捕まえようとした。
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