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そう言うチェルルは少し不安そうにしている。五年も故郷を離れてしまうと、知り合いも顔や雰囲気が変わっている可能性がある。それを思ったのだろう。
やがて川沿いに漁師小屋らしい小屋が見えてきた。緊張したチェルルがドアを叩くと、中から若い青年の声で「名を」と問われる。
「チェルル」
そう答えた途端、バンッとドアが開いて中から一人の青年が顔を出した。
やや長いボブヘアーの青年は、大きめの黒目を丸くしている。髪も同じくサラサラで黒く、チェルルよりも長身だった。
だが浮かべる表情は少年のようで、チェルルをウルウルとした目で見た後でガバリと抱きついた。
「会いたかったよ、チェルル兄ちゃん!!」
「うわぁ! おま……もしかして、フリュウか?」
「そうだよ! なんだよ、わからなかったのかよ!」
「いや、だってお前! 成長しすぎ!」
アワアワしながらも嬉しそうなチェルルを見て、他の皆は顔を見合わせて笑う。元気に振る舞っていてもそれが空元気であることはわかっていたのだ。
ひとしきり再会を喜んだ後、フリュウという青年は小屋の中へと案内してくれた。小屋は一見普通に見える。だが、川へ面した側に引き戸があり、開ければすぐに川になっている。これで、誰にも見られず船に入るそうだ。
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