金色の狼(ラダ)

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 痩せ細り、顔色も悪いラダを初めて人の優しさで包んでくれた人。愛情をくれた人。この人がいて、温かなものを知って、強い感情も生まれた。  食べられるようにしてくれた。顔色が良くなって、肉付きがよくなって、「可愛いですよ」と笑ってくれた。そういう人はドンドン顔色が悪くなって、痩せていったのに。  人を恨み、憎み、悲しくて痛くてたまらなかった。この人を苦しめ、悲しめ、貶める人が全員憎くなった。醜い感情に自己嫌悪もした。「それを含め、人ですよ」と、彼は言ってくれた。  この人を救いたい。この人を、自由に。いつの間にか、それが心からの願いになった。  神は言った。その心こそがアルブレヒトを救う為に必要なのだと。  他にも数名、適合する者がいる。けれど彼らはまだ交わらない。だからこそ、ラダが必要だと。  誰にも、譲るつもりはない。この役目は無力な少女が得た最高のお役目だ。何も出来なかったラダが初めてアルブレヒトの為にできる事なのだ。 「今日で、終わります。満月の夜、金色の狼が全てを終わらせてくれる。アルブレヒト様、私はこれから狼を探します」 「ラダ、いけません! 貴方の方が今は弱っています。お願い、いけない!」 「ごめんなさい。それだけは、きけません」     
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