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神の家に巣くうモノ
早朝のナハルの教会に、二人の女性が転がり込んできた。
まだ早い時間だが、毎朝の勤めを行っていた神父はその女性達を見て言葉をなくし、直ぐさま駆け寄っていった。
「どうなさったのですか!」
「お……お助けください、神父様」
長い金髪は汚れ、服は裾が汚れて擦り切れていたが、素材の持つ美しさは隠せない。深い夜空のような青い瞳、はっきりとした顔立ちの美女は、その腕に小柄な少女を庇っていた。
「国からわけもわからず連れ出され、酷い扱いを……隙を見て逃げ出してきたのです」
「まさか、この子も」
「誰かはわかりません。ですが、同じ馬車に乗せられていて。一人残せばどんな無体が待っているかわからず、連れ出して」
震えながら少女を抱きしめる美女を憐れんだ神父はすぐに大きな毛布を美女に着せかけ、そっと立ち上がらせた。
「まずはこちらにいらっしゃい。部屋に湯を用意するから、汚れを落として。大丈夫です、ここは神の家。必ず加護がありますから」
「ありがとう、ございます」
目に涙を浮かべ、安堵の表情を浮かべた美女はそっと腕の中の少女も立たせ、言われるがままに二階にある一室へと案内された。
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