あの日のお兄さん

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あの日のお兄さん

ねぇ、ぼく。 「お兄ちゃん、だれ?」 僕? そうだなぁ、僕は近くて遠いところから来た君のお友達なんだ。 「ちかくて、とおいの?」 そうだよ~。ちょっと難しかったかな? 「うん、よくわかんない」 それは、ごめんよ。 「どうして、さっきおくるまからぼくをたすけてくれたの?」 それは、君に生きていて欲しかったからだよ 「ぼくに?」 そう、君に。 お兄ちゃんと、約束をしてくれないかな? 「やくそく?」 うん。 まずひとつ 「うん」 これから先、嫌なことや悲しいことや辛いことが起きるんだ 「うん」 お父さんでも、お母さんでも、おじいちゃんでも、おばあちゃんでも良い。辛かったら辛いって言ってね、できないって言う事は、恥ずかしい事じゃないんだ。 「うん」 ふたつめ。 自分の好きなことを見つけるんだ。今、ワタル君に好きことはあるかな? 「うん! 絵を描くこと!」 それは良い事だ。いっぱい絵を描いて、友達に自慢すると良い。疲れたら休めば良いんだから。 「うん!」 みっつめ。 今ワタル君に好きな女の子はいるかい? 「うん! おとなりのみちるちゃん!」 そっか、これから先、みちるちゃんと会うのが恥ずかしくなる時が来るんだ。 「うん」     
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