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レイバンと名乗る獣人が献上品を持ってきた夜、国王ファウストは側近であり密偵のウェインからの報告を聞いて息を吐いた。
「やはり、カラバ侯爵というのは嘘か」
「そのようです」
小柄な側近は肯定したが、表情はまだ何かを言いたそうな様子だ。ファウストはそれを見て、先を促した。
「どうした?」
「あの、嘘ではありましたが深い事情もあるようでして」
「事情?」
「はい。あの猫獣人をつけると、国境の森に入って行きました。そこにあった猟師小屋で、人間の青年と二人で暮らしているようです。話を聞くに家も職もなく、このままでは冬を越せないと考えあぐねた結果だったようです」
「なるほど、悪意はなかったか」
ならば責める事も酷に思う。生きるに窮しての事で、だまし取ろうという悪意はなかった。実際送られた獲物は新鮮でまだ生きていて、毒などもなく美味しく夕飯に上がった。
「会話から、人間の方はランバートという名のようで、それを元に周囲に聞き込みをしたところ、当てはまる人物がいました」
「聞かせろ」
「数日前に、貧乏な粉引きが亡くなり息子達が財産を分けたと。その粉引きの末息子の名が、ランバートというそうです」
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