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「貴方が、私の呪いを解く?」
そんな事可能だろうか。自分でも諦められなくて、沢山の書物を読み漁り試した。魔術も、薬も試した。けれど、不可能だった。
「ナル」
前へ回ったアルブレヒトは小さな瓶を取り出す。それを自らの唇に含み、そのままキスをされた。
喉に流し込まれる液体はトロリとしていて甘く、温かい。それが喉を通り過ぎて落ちていくと、不意に強い酒でも流し込まれたように体が熱くなった。
「あっ、ぐっ!」
苦しい、息が吸えない。体の中がグチャグチャにかき混ぜられていくような強烈な不快感に立っていられない。
「ナル、大丈夫。大丈夫ですから」
倒れたナルサッハの頭を自らの膝に乗せ、アルブレヒトは大切そうに頭を撫でる。その優しい動きを感じながら、ナルサッハは目を閉じた。
例えこのまま二度と目が覚めなかったとしても、きっと恨みはしない。むしろこの人の手で死ぬのなら、それも悪くはないと思えたから。
ふと名を呼ばれていることに気付いた。重い瞼を開けてみると、泣きそうな顔のアルブレヒトがいる。目を覚ましたナルサッハを見て、頭を抱き込むように倒れてきた。
「良かった……思ったよりも目が覚めないから……」
「我が君……」
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