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震えた声に、ふとこみ上げる愛しさ。それを込めて呼んだ声に驚いて、ナルサッハは自分の喉元を抑えた。
枯れたような声ではない、元の澄んだ綺麗な声に戻っている。
恐る恐る足元も見た。そこにはかつてと同じ、淡いグリーンの美しい尾が戻っていた。
「あ……」
本当に、戻る事ができた。こんな日が来る事を、半ば諦めていたのに。
嬉しさに涙が溢れる。それを見下ろすアルブレヒトは笑い、柔らかくキスをした。
「良かった、ナル」
「我が君」
「父を説得し、半ば脅すようにして薬を手に入れたかいがありました。ナル、私の可愛い人」
愛しげにキスをするアルブレヒトの体がゆっくりと重なっていく。手を絡め、何度もされるキスに絆されて、ナルサッハも愛しく全てを受け入れていた。
「ナル、実はこの薬を手に入れる為に一つ、父と約束してしまったのですが」
「海王と、何をお約束なさったのですか? 私に出来る事ならばなんなりと」
心も救ってもらったのだから、当然何かを返したい。その約束に自分が必要ならば、喜んで協力するつもりだ。
アルブレヒトは苦笑して、耳元に唇を寄せる。そしてまるで悪戯を囁くように、ナルサッハに伝えた。
「私の子を産んでいただけませんか?」
「……え!」
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