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ほんのりと赤い顔をした黒猫は黒い半ズボンの前を押さえてランバートを睨み付けた。
「往来でなんて事するんだよ! もぉ、恥じ知らず!」
「あぁ、悪い。案外可愛いな。お前、本当にうちの飼い猫のレイバンか?」
「当たり前だろ? 10年も世話になってるんだからさ」
立ち上がった黒猫は尻尾をくねくねっとさせながら一緒に田舎道を歩いていく。行くあての無い一人と一匹は、とりあえず人目のない所へと向かっていった。
森の入口にある切り株に座った二人はそこで話し込んでいた。
この猫の名前はレイバン。猫の姿のまま生活に紛れていた猫獣人で、間違いなく10年前にランバートとその父親が拾った。
褐色の肌に黒髪、紫色の瞳が特徴の青年だ。
そもそもこの世界には獣人というものがいるが、珍しい事から人間に連れ去られる事が多く、その為に森の奥やらに隠れている事が多い。
レイバンは小さな頃に親とはぐれたらしい。そこをランバートが拾ったのだ。
「運がよかったんだな」
「ほんとだね~」
「気楽だな」
「案外猫のままでも快適でさ。街を回ると餌もらったりしたし、駄目でもお前の親父さんがくれて、寝床もあったから」
「それにしても、ただの家猫だと思ってたのにな」
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