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集会
大きな硝子窓から光の帯が幾筋も差し込んで、白い講堂は水に満たされたように清々しかった。
「さて、次の話は…」
壇上に立った男は、皆がうんざりしているにもかかわらず、相変わらず言葉を吐き出し続けている。集められた子供たちはいい加減、好き勝手に騒ぎ始め、広い空間は心地良い騒めきに埋まっていた。
「諸君に限ってそんな間違いはないと思うが、近ごろネットワーク上で流れているいかがわしい広告について、注意を促しておく。なんでも『幸福を見つけませんか?』という宣伝文句を打ち出して、無用の商品を売りつける…」
「あ、俺、この広告知ってるぜ」
「俺も。なあ、なんでこんなのわざわざ集まって聞かなきゃなんねえの? メールで流せばいいじゃんね。なあ、シミアン」
「ん? 何」
シミアンは鳶色の睫毛に縁どられた眼を瞬いて、虚ろな返事をした。
「なんだよ、どうした? ぼうっとしてるぜ。なあ、今日、皆で遊ばねえ?」
「んー、ごめん、やめとく」
気のない返事に、少年は眉を上げるとシミアンから身体を離して、隣の少年に囁きかけた。焦点の定まらない瞳を天井に向けてシミアンは、そっと瞼を閉じる。
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