集会

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 高いアーチの広間には、まだ、壇上の男がしゃべり続ける声が響いていた。 「残念なことに、隣接する白の街でまた一人、仲間が亡くなりました。詳しいことはまだ分っていないが、感染症の疑いがあるとのことだ。諸君もくれぐれも、気を付けるように。規則さえ守っていれば、感染症にかかることはあり得ないのであって、そういった意味では諸君たちには心配はないと思うが、えー、衛生面には充分な配慮をすること。では、解散」  最後の一言だけを耳聡く聞きつけ、子供たちは歓声を上げた。  壇上から下りかけていた男は面食らったように目を見開いてから、顔を真っ赤にして何かを怒鳴った。  男に捕まる前に講堂から走り出た子供たちは、鈍い光を放つ空が見渡せる、硝子張りの回廊へと散っていく。  硝子の向こうの眼下に、黒の街が広がっていた。無機質で機能的なビルが立ち並ぶ景色は、面白みに欠けるものの、整然として美しい。  いつもより幾分天気がいいのか、南の方角に白の街の端が見えた。 「最近多くないか? 日没の街でも出たってよ」  シミアンに追いついた隣室のエミリオが、天井を見上げて難しい顔をした。     
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